Artichoke Brethren

カリフォルニア・ベイエリアに住む CG エンジニアの気まぐれなブログ (ただいま引っ越し中)

2011年12月

前回まで、主にビザ取得やアメリカ入国に関する事情を書いてきました。

僕は15年以上日本のゲーム業界で働いてきて、極めて優秀なプログラマが沢山いるのをよく知っています(IT業界全体でみるとどういう比率になるか知りませんが、日本のゲーム業界には会社を問わず、ちゃんとしたデザインや実装ができる優秀な人が多いです)。海外で活躍する機会はもっとあってもいいと思いますが、その際に大きな問題になるのが、ビザよりもむしろ英語力の壁なのではないでしょうか。

日本という国の構造的な事情として、日本人はあまり英語が出来ません。最大の理由はたぶん、その必要がないから、でしょう。他のアジアや欧州の人と話すとよく判るんですが、日本語の専門書の豊富さは非英語の中ではダントツです(中国の事情は知りません)。一方他の国では、大学レベルで学ぶようなことは、英語の本しかないというのが一般的な状況のようです。日本は明治以降に偉大な先人たちが尽力してくれたおかげで、あらゆる分野の専門書が少なくとも教養レベルでは十分すぎるところまで完全に日本語で用意されています。数学書や哲学書などの充実ぶりは特にすごいと思います。この文化資本はまだよく機能していて、コンピュータ関係の専門書でも新しいものが次々翻訳されて容易に入手可能であり、わざわざ英語の本を読んだりカンファレンスを聞いたりする必要がありません。よほど特殊な分野や最先端の話を追いかけるのでさえなければ、とても手に負えないくらいの勉強材料にあふれている、というのが現状でしょう。

というわけで日本の組織でプログラミングの仕事をする以上は、それがどんなにグローバルな製品開発であったとしても、無理に英語で頑張る必要はありません。せいぜい和訳されないAPIのドキュメントや、わずかな学術論文を読むことが出来ればいい、というのが僕の結論ではありました。ローカライズ業務にしても、自分が翻訳するわけでなければカタコトで済みます。ところが、いざ海外の企業や組織で働こうとした場合、そこでは次元の違う、ネイティブなコミュニケーションとしての英語力が必要とされてきます。海外の職場で働いてみたいとは思っていても、プログラミングスキルはともかく、同僚や上司とのコミュニケーションが不安でそこまで決断しきれないという人は多いと思いますし、その心配は正しいと思います。もちろん帰国子女だったり、留学経験があったりして英語圏で生活したことがある人ならば何の問題もありませんが、僕の知るかぎり、日本のゲーム業界にいるとても優秀なエンジニアの方々は、せいぜい GDC や SIGGRAPH に行く程度、ドキュメントは読めるけど会話はちょっと・・という人がほとんどです。そして僕もそうでした。

では実際に決意して海外に行って働くとして、どの程度の英語力があればいいのでしょうか。自分の人生の大きな決断をするにあたって、ここが一番気になるところです。僕もまだ働き始めたばかりで何ともいえないのですが、今感じていることを書いておきます。

英語力の目安として日本人が大好きな TOEIC。あちこちのブログなどにもありますが、残念ながらこれは英語ができないことを知るためのテストだと思います。僕は今までに3回受けました。最初は英会話経験ほとんどなし、英語の勉強といえば大学入試程度まで、という状態が出発点です。ベルリッツに2ヶ月くらい通い、初めて受けた 2002 年に 650 点(Reading 400 / Listening 250)でした。日本の大学卒業の理系のプログラマにはこういう人が多いと思います。その後ちょっと間が空いたのですが、また思い立ってベルリッツに3ヶ月くらい通い、2005 年くらいに再度受験して 780 点。さらに TOEIC 向けの勉強(過去問とか)をしてみたりもしました。リスニングは TOEIC 向けの勉強するとすぐ上がり、だいぶ傾向になれてから受けた 2007 年で 930 点、という感じでスコアは上がっていきました。5年もかけてだらだらやっていた感じですが、年に数ヶ月、仕事が比較的ヒマな時期にベルリッツに通ったり、通勤中に VOA や CNN のニュースを聞いたり、というような程度の勉強の仕方でした。

日本では TOEIC 900 を超えるととても英語が得意な方だ、という風に見られると思います。たしかにリスニングを続けると、日本で外国人と会議や電話をするときにもどうにかある程度のコミュニケーションはできるようになります。また、海外のカンファレンスなどで発表者が言っていることも半分以上はわかるようになります。

でもそれは本当にスタート地点にしか過ぎない、というのをいま強く感じています。

そもそもカンファレンスなどのプレゼンテーションや、論文発表で使われる英語は極めてシンプルでわかりやすいものばかりです。実際に海外の職場で働いてみると、想像できなかったくらいいろんな英語を話す人がいます。早い人、遅い人、口癖がある人、声が小さい人、クリアな人、聞き取りにくい人、さまざまです。慣用句やスラングも沢山あります。プレゼンテーションは聞けても、日常会話はちっともわかりません。毎日の仕事で同僚とのやりとりが7割しかわからなかったら、使い物になりません。

今は結局どうしているかというと、ほぼ一日ボイスレコーダをONにしておいて、聞き取り逃した大事な点がありそうなときは再確認しています。それでもわからないときもあり、何度も聞き返したり、再度話をしたりしています。これは時間もかかりますし、つらいです。まあいずれ慣れてくるだろうと思って頑張っていますが・・・。少なくともプログラマの現場で働くために必要な英語力は、TOEIC 900点台とかなんとかとは別次元にあるんだ、というのを強く感じました。どうしても TOEIC ではかるのであれば、980 とか 990 とかであれば、まあ安心してもよい目安だと思います。700点と930点はあんまり変わりません。

では海外転職前にできることは、他に何があるでしょう?

あくまで僕の考えですが、プログラマが海外の職場で働くため、という目的に関して考える限り、最低限話せるようになった後は(たとえば TOEIC 900 を超えた後)、ベルリッツなどの英会話学校に何年通ってもらちがあかないと思います。プログラマにはプログラマが共有する、表現とか言い回しとか、デザインパターンとかがあります。これをコミュニケーションに有効に活用できるようにしないと意味がありません。アーキテクチャや実行効率の話がストレスなくできないといけないんです。従って、プログラマと英会話するのが一番の近道だ、と言えると思います。

職場に英語が流暢に話せる同僚がいたら、とてもラッキーですよね。是非英語力を磨く手伝いをしてもらうといいと思います(あなたがいつか海外で働く気なら)。残念ながらいない場合。なんとかして友人を作りましょう。海外のソフトウェアエンジニアはみんな本当に日本のゲームプログラマに興味がありますし、最近は日本の各種カンファレンスにも結構たくさん来ています。留学生のインターンとかを受け入れて教える側になってみるというのもいいかもしれません。もっとも会社的にはその人の海外転職の手伝いなんかしたくないでしょうけど・・・。外資系のソフトウェアのセミナーなども良い機会だと思います。Google や MS などが行うセミナーは現場のエンジニアが喋ってくれますから、生の表現が沢山聞けていい勉強になります。活用してみてください。SIGGRAPH などの学会発表は、ここで目指す英語学習にはあまり役立ちません。

最短距離ではないかもしれませんが、多少くだけた映画やドラマを英語字幕つきで見るのもそこそこ有効なんじゃないかと思います。もちろん僕のように無謀に突っ込んでみて、現場で苦労する、というのも一つの方法だとは思います。他にももっといい上達方法をご存じでしたら、ぜひ教えて下さい。

生活の準備に追われてしまいましたが、いよいよ初出社の日になります。僕は8:45にレセプションにくるように言われていました。担当のリクルータの方が出迎えてくれて、HR(人事)から各種オリエンテーションがあります。ここでまず、就労許可があるかどうかを確認されます。僕のような外国人の場合はH1Bなどのビザ付きのパスポートがあればそれでOKです。

それからは各種ベネフィット(福利厚生)などの説明になりました。健康保険、401K、休暇、従業員向け割引、訪問者の迎え方、などなど。また写真撮影をして社員証兼カードキーの作成なども行います。そして給与の振り込み手続きをするために、小切手が必要になります。

振り込みでも引き落としでもそうなのですが、口座番号の確認のために小切手を使うのが普通のようです。ただしお金を動かすわけではないので、中央に大きくVOIDと書いて無効にして、印刷されている口座番号やルーティング番号が実際に使われることになります。口座開設時には数枚の小切手をもらえるのですが、それとは別に口座番号が記載された紙をもらえることもあって、その場合は小切手ではなくそれをわたせば自動振り込み(ダイレクトデポジットというらしい)を手続きしてくれます。

といってもこの手続きは数週間かかるようで、僕の場合は最初の給料は小切手で渡されました。この小切手は銀行に持って行って振り込んでもらったり、最近のATMでは読み取り用のスロットに挿入したりして預金することができるようです。封筒にいれてATMに入れるという方法も多かったようですが、なんか微妙に不安ですよね・・・実際間違いもよく起こるようです。そうそう、こちらの給料は週毎の支払いなんですよね。

僕の勤務する会社では、休日は3種類あります。
・paid holiday  いわゆる祝日。クリスマス後〜元旦までの冬休みも含まれます。祝日は当たり前だろ、という気もしますが、カレンダー的に休みっていう日は会社や州によってまちまちだったりするのかもしれません。年間で12日くらいありました。日本よりちょっと少ないかな?
・sick day 病欠用の日だそうです。家族が病気の場合もこれになるのかなあ。有給で、初年度は12日、30日まで翌年持ち越し可、でした。
・vacation 私用の有給休暇で、勤続年数次第で15日〜30日。日本の有給に盆休みがくっついたような感じでしょうか。

ところで雇用の形態も、hourly(時給制)と salary(年俸制)とあり、後者は exempt とも言われて残業などがつかないタイプになります。その分給与は高めのようですが、夜や週末も必要であれば仕事をする場合も出てきます。僕は日本でもフルフレックスの裁量労働だったので、特に違和感はありませんでした。

さて、これでようやく社員として働き始めることが出来ました。長かった・・・と思いますが、実際に同様の経験をした同僚はビザ取得に1年近くかかったようで、決意してから面接、オファー、ビザ取得、渡航、就労開始までで4ヶ月だった僕は相当スピーディに進んだ例だったようです。早いのはいいんですが、やはり英会話の練習期間が足りなかったようで、まだちょっと苦労しています・・・。英語の上達方法についてはまた改めて別エントリで書こうと思います。そうそう、日本にいるうちに歯医者や人間ドックで健康のチェックをしておくのも忘れないようにしましょう。

この情報が今後渡米して仕事する意思のある皆さんの、何かのお役に立てば幸いです。

おわり

いつまでもホテルに滞在しているわけにはいきませんので、すぐに家探しです。僕の場合は会社が3週間のホテルとレンタカー、不動産業者を紹介してくれました。この間にどうにかしないといけません。

不動産屋さんは日本と違って、店舗みたいなものはなく、個人ベースでやっているところが多いようです。リアルターと呼ばれてます。ベイエリアでは探し方は二つあって、個人の家の賃貸などは craigslist という2ちゃんみたいなサイトにたくさん情報があがります。また賃貸専用のアパートなどではそのアパートの1Fに事務所があって直接そこにいって相談します。craigslist の方は、貸し主が直接出していたり、別のリアルターを経由して出していたりします。

まずは自分のリアルターとエリアや物件の種類などのコンサルティングをします。僕は小さい子供が二人いるので、まずいい小学校があるところを優先に、会社の近辺の地域を調べてもらいました。アメリカの学校については踏み込むととても深い世界なようなんですが、単に教育水準が高いからという意味ではなくて、いい学校があるーPTAがしっかりしているー住民に変な人が少ないー治安がいいー人気があり地価が高いー教育水準の高い人があつまるーいい学校になる、みたいなループがあるようです。なので子供がいなくても、いい学区を選ぶのが簡単でいいという話もあります。もちろん、高くはなってしまいます。

www.greatschools.org が頻繁に利用されて便利です。最近は yelp もとても役に立ちますね。

何日かかけて、リアルターのクルマであちこちを見て回ります。ただ最初は何をチェックしていいのかさっぱりわかりません。とりあえず間取り、キッチンや水回りの設備、日当たり、ガレージなどを確認します。いろんな人に話を聞いてみると、建築そのものに問題があって引っ越すことよりも、周辺地域の事情で引っ越すことの方が多いようなのであまり家そのものの状態にはこだわらない方が良いかもしれません。設備がきれいな新しめのアパートはたいていまだ開発中で治安の悪いようなトランジションエリアと呼ばれるところにありますし、賃貸に出ている家は築50年以上のものも多いからです。それでも適度にリノベーションされていたりして、問題が出たらその都度直していくというスタイルでよさそうです。

まだ住んでいないので設備面の問題はよくわからないのですが、ベイエリアの一軒家の場合、エアコンはガス式のヒーターだけの場合が多いようです。お湯はタンクがある場合と、日本と同様に瞬間湯沸かし系の場合と二つあります。ADTというセコム的なセキュリティがついている家もたまにあります。ネットについては最近は固定電話をひかずにケーブルTVと同じプランに入ることが多いようです。ベイエリアだと comcast が大手になります。プランや実際の速度などは入居したらまたレポートしたいと思います。

正直いって家を決めるだけならいいんですが、学校などの各種確認や手続きをいきなり全部やるのは大変です。ベイエリアには日本人がやっている不動産業者もあるので、そこに相談してみるのも良いでしょう。プロパティマネジメント会社とも呼ばれるようですが、月々の家賃に数パーセントの手数料をとって、大家さんと代わりに契約し各種アフターサポートや手続きの代行などをしてくれます。アメリカ生活に慣れてきたら不要かもしれませんが、最初は頼りになると思います。近隣に住む別の日本人の方を紹介してくれたりもします。

敷金(1〜2ヶ月)と先払いの一ヶ月分の家賃、業者への手数料などで家賃の4倍くらいの金額はかかりますので、この資金をどうにかして支払わないといけません。アメリカでの銀行口座がすでに開いていたら、日本の親類などに依頼して送金してもらうのがいいかと思いますが、実際の入金確認までに3〜4日かかります。クレジットカードでの支払いも可能ですが、日本のクレジットカードを使うと10%くらいの手数料を請求されてしまうことがあります。日本企業の駐在だったら会社が助けてくれるでしょうが、自力で転職した場合はここが結構大変だと思いました。日本のネットバンキングの外国送金は日本の窓口での事前登録が必要なようですし・・・

というわけで現時点(2011年12月)では、この入居時のまとまった資金を用意する3つの方法があると思います。

1.ユニオンバンクに口座を作っておき、渡航前に送金しておく。アメリカの窓口でカウンターチェックをもらい、支払いにつかう。
2.三井住友ダイレクトの外国送金サービスを有効にしておく(日本で書類を送る)。アメリカで口座開設後、ネットで送金先口座登録をする(登録に2日くらいかかる)。その後ネットで外国送金をする(入金に3日くらいかかる)
3.クレジットカードで支払う(限度額・手数料に注意)

こちらのATMで現金を下ろすかキャッシング、という技もなくはないんですが、一日数百ドルがリミットなので何種類も使わないといけないと思います。

難しいですよね・・・

つづく

前回タイトルに書いておいて忘れてしまった、SSNの件。

H1B ビザで入国した人は、10日後にソーシャルセキュリティオフィスに行きます。この10日というルールは、I−94の日付から10日たたないと入国情報が届かないからだそうです。よくわかりません。しかし僕は3日後に行ってしまいました。いろいろ言われましたが、受理はしてくれました。SSオフィスは主要な市の中心部など、あちこちにあるようです。僕はバークレーのオフィスに行きました。

入室するとまず受付装置があるので、新しいカードの発行を選んで番号札を受け取ります。その後ベンチで待ちます。ベンチには全部で15人くらいが待っていましたが、何を待っているのかよくわかりませんでした。2〜3人後に自分の番号が呼ばれたので、新しく取得したい旨とパスポートを提示します。

受付用紙をもらって、記入します。パスポートの番号や両親の名前などを書くくらいですが、SSNカードの届け先にこちらの住所を書かなくてはいけません。ホテルの住所でも大丈夫ですが、いつ届くかわからないので会社の住所にしました。

再度提出し、書類のチェックを受けて終了です。数週間かかる場合もあるようですね。気長に待つことにします。でも年末日本に帰るんですけど、大丈夫かなあ・・・?

さて銀行について。ユニオンバンクは日本で口座開設できるのが良いのですが、チェックブック(小切手帳)をくれません。電話や窓口で申し込めば良いのですが、この小切手帳には住所が印字されるため、どうせ有料でもらうなら住むところが決まってからの方がよいですよね。ところが賃貸契約して自動引き落としや給与振り込みの手続きなどの際には、小切手が必要になります(お金を動かすためではなくて、口座番号とルーティング番号の確認のため)。

こういうときは、銀行に行って、「カウンターチェック」をくれ、というと手書きで口座番号を書いた小切手帳を渡してくれます。使い道によってはいやがられる場合もあると思いますが、とりあえずこれを5枚くらいもらっておけば事足りるでしょう。お金もかかりません。

なお日本からアメリカの銀行にネットバンキングで送金するには、事前に口座を登録しておかないといけません。三菱東京銀行では2011年12月からグローバルダイレクトに入らなくても外国送金が出来るようになりましたが、これも事前申し込みが日本で必要です。

三井住友銀行のダイレクトは、事前に申込書と本人確認書類を送って外国送金を有効にしておきさえすれば、宛先の銀行口座の登録はネットからでも出来ます。ほぼ1日後に送金ができるようになっていて、ネットで送金するとその翌日には送金が実行されるようです。数10万円単位で動かす場合にはこのように結構時間がかかります。

アメリカの銀行間同士での資金移動も日本に比べると面倒です。ネットバンキングでは月2000ドルくらいしか送れないことが多いようです。こういうときは、送金元の小切手を送金先の銀行の窓口に持って行って移動するのが普通のようです。まだやってみたことはないですが、これだと1万ドルとかでも移動できます。が、やはり時間はかかります。

日本の銀行はネットでひょいひょいと自分の口座でも知らない口座でも、100万200万と送金できてしまってすごいですよね。しかも振込先口座にはほぼ即日に反映しているのが素晴らしいと思います。仕組み的には全然問題なくどこでもできそうなものですけどね。

まだまだつづく

まあ到着日は疲れてるし早く寝ましょう、ってことで、次の日を初日にします。
が、僕はここでまず AT&T の店に入りました(笑)。iphone を買うためです。不動産屋や友人と連絡するのにも、日本の携帯ではかけることは出来ても受けることがままなりません(通常こちらの人の契約は国際電話不能だったりするため)。まだ SSN がありませんが、AT&T の店頭でなら $500 のデポジットを預ければ買うことができます。SSN があってもクレジットヒストリがないと同じようにデポジットが必要になるようです。なのでこれはもう仕方ないと思って払いましょう。これでローカル電話番号を得ることが出来ます。

ちなみに日本と違って、携帯でもエリアコード(最初の3桁)を見るとどの場所で買ったものかわかるようです。たとえば 415- ならサンフランシスコ、とか。でも引っ越してもそのまま使いますから、だんだん混ざってきますけどね。データプランにも加入して、とりあえずネットが開通するとかなり安心感が出ます。

さて、すでに住むところが決まっている人はいいんですが、僕の場合はこれから探さなければなりません。幸い会社が2週間分のホテルとレンタカーを手配してくれていますので、この期間にどうにかケリをつけたいところです。

また Be Connected USA というリロケーションサポート会社をつけてもらえました。僕は念のためジャパンリロケーションという日系の会社にも相談したのですが、どちらの会社もよくしてくれました。Be 社は現地の不動産屋(この辺では個人でやっている人が多いみたいです)を2日間やとって、各種手続きをしながらツアーみたいなことをしてもらえました。いくらかかるのか知りませんが、非常に助かります。

最初にバンクオブアメリカに行って、口座を開設します。渡米前に三菱東京UFJ銀行経由でユニオンバンクに口座は開いてありましたが、やはり支店やATMの多さなどでバンクオブアメリカにあった方が良いと思いました。

SSNがありませんが、H1Bビザ付きのパスポートを使って口座開設できます。担当の方はとても丁寧に対応してくれました。住所は仮住まいのホテルを使っておきます。

いろいろ説明を聞いて、CHECKING と SAVING がセットになっているプランで口座開設しました。デビットカード兼ATMカードが発行されます。このデビットカードで買い物をすると、$1 未満の金額をサービスしてくれるそうで、利息が低い今は人気があるみたいです。(訂正:ちょっと違いました。使った分を$1単位に切り上げた差を SAVING に振替えて、かつ同額をマッチングでもらえる、ということみたいです。ややこしい・・・)

SAVING アカウントは普通預金的、と説明しているサイトが多いですが、それは利息がつくから、という意味であって、用途的には定期預金的な意味合いが強いように思います。また今は CHECKING でも小切手帳自体ほとんど使わなくなってきました。相当遅れているといわれていたアメリカの銀行事情も、ネットバンキングのおかげで結構変わってきているようですね。

初期預け入れが必要だったので、最低預入額の $25 程度をいれておきました。すぐに送金の手配をして、維持手数料がかからない程度 ($300) にはしておく予定です。また給与の自動振り込み用の用紙や、他行からの振り込み用のルーティングナンバー、国外からの振り込み用の SWIFT ナンバーなどももらっておきます。ネットバンキングのアカウントも作成しました。

無事ビザスタンプが入手できたので、航空券を手配してもらっていよいよ渡米です。 片道切符になるわけですが、片道航空券よりもPEX等の往復航空券の方が安いですので、 往復で買って片道は使わない、というようなことになります。頻繁に帰ってくるのならそのまま 往復で使い続けてもいいんでしょうけどね。 

出張でいくこともよくあったのでESTAもあったのですが、日本でのチェックイン時にカウンターで ESTAで渡航かビザで渡航かを聞かれます。片道ですと告げて、通常のようにチェックインは完了。

機内では白い入国書類(I-94)と税関申告書に記入します。住所は仮住まいのホテルを書けばOKでしょう。 税関申告書はちょっと悩みます。というのも、その裏面に、

・米国居住者 海外で取得し、米国に持ち込んだ品目をすべて申告して下さい
(リストが足りない場合は複数の用紙を使って下さい)
・訪問者 米国に残す全品目の価値を申告して下さい

とあるわけです。今回は居住者として初めて渡航するわけで、預けたスーツケース2つや機内手荷物は もちろんすべて日本で取得したものなわけです。これを全部申告するのか?と疑問に思って、客室乗務員 に聞いてみました。すると、一応書いた方がいいんじゃないか、とのこと。

引っ越し荷物のインボイスなみに全部書くのかよ、というか預けた荷物なんか覚えてないよ、 と困りつつも、とりあえず20品目くらいリストを作ってみました(実は不要です)。

さてアメリカに着いて、入国審査にならびます。ここで用意する書類はいつもと違って、 ビザ付きのパスポート、機内で記入したI-94と税関申告書、念のためI-797とオファーレターなども 出しておきます。

入国審査ではまず働く会社、職業を聞かれます。ここで税関申告書について問い合わせたところ、 スーツケース2個くらいの私物は申告する必要はない、とのことでした。従って物品総額は0になりました。 一般的に居住者用の生活用品には関税はかからないはずではあるのですが、こうやって個別に確認していかないと 何があるかわからないですものね。たまたま機嫌のいい審査官に当たったのか、これから住む場所を探すが いい場所は知らないか、などと和やかに雑談も交わして、いつもの訪問時と同様に時間もかからず終了しました。 一番大事なことは、I-94の下の部分をパスポートにステープルでとめてもらいますが、この滞在期限をしっかり 確認することです。これがビザの有効期限と同じか、パスポートの有効期限になっている必要があります。

米国に合法的に滞在している根拠は、ビザスタンプがあることではなく、このI-94書類によるものだそうです。 ビザはあくまで入国の審査のためにつかうもので、滞在許可自体ではないんですね。

もう一つ注意としては、ビザで渡航しているときは航空券や搭乗券の控えを取っておいた方が良いらしい、ということです。 これは将来アメリカ国外に出ている期間を証明するために使ったりするためです。

その後の税関検査では、食品があるかどうかだけ聞かれて、スーツケースをX線検査して終了でした。検査せずにそのまま出て行ける場合も多いと思います。これで晴れて就労ビザでの入国が完了しました。

つづく

いよいよ面接の日になります。書類をもって領事館へ。領事館には電子機器、飲食物、危険物は持ち込めません。待ち時間が退屈なので本くらいはあった方がいいと思いますが、なるべく持ち物は減らして書類だけにした方がいいと思います。以下は大阪領事館での手続きの流れになります。

朝一番の回を予約しましたが、面接予約時間の30分前くらいに到着するとすでに10人くらいが歩道になんとなく待っていました。列らしい列はできていません。15分前くらいになって、警備員がパスポートと予約書をチェックし、ドアの前に列を作ります。この時点で20人くらいの列になりました。飲み物は中で預けられないということで、ここで置いておく箱があります。

待っていると順番に3人ずつくらい呼ばれて、入り口すぐの手荷物検査を受けます。携帯電話などの電子機器はここで預けることになり、金属探知ゲートをくぐってボディーチェックを受けます。

次に書類を審査する窓口に並びます。L,Eビザとそれ以外で列が分かれていましたが、ほぼ同じようなペースで進みます。家族分はまとめて処理してもらえました。特に書類に不備が無ければすんなり終わるようです。この辺は東京と大阪で違うかもしれません。待ち時間含めて15分くらいで終わり、面接の階に行きます。 

ここでもまた少し並んで待ちます。面接は二つくらいの窓口で、たったままガラスごしに話をします。面接といっても、普通のアメリカの入国審査のときのほとんど変わらない感じです。指紋をとって、多少の会話が終わると「あなたのビザは承認されました、明日パスポートを投函します」と言われて面接は終了になりました。僕の場合は面接の不要な子供も連れて4人で同時にしましたが、その辺りも入国審査に似ていますね。

あっけないと言えばあっけないですが、事前に手続きをちゃんと出来ていれば大丈夫ということでしょう。それとやはり、手続きをしてくれる弁護士や勤務先の会社によって結構違いは出てくるとは思います。

後はレターパックのトラッキングをチェックしていればよく、言われたとおりに翌日投函され、翌々日には自宅に届きました。I-797 などの書類も一緒に返ってきました。パスポートの1ページ全面にビザが貼られているので、内容をチェックして問題が無ければ、無事取得完了となります。 というわけでおそらく最短ルートだったとは思いますが、オファーを受けてからここまでに45日くらいはかかりました。プレミアムプロセッシングは確かに早いですけれども、LCA を弁護士と会社とでやりとりするのに何度も往復があったりして、なんだかんだで1ヶ月以上はかかってしまいます。面接の状況次第ではもっとかかることも珍しくないかもしれませんね。

これでようやく入社日を確定することができるわけです。併せて航空券の手配、引っ越し準備、仮住まい、現職の退職手続きなど、すごい勢いで事務作業を次々にこなしていかなくてはいけません。僕は引っ越しの準備までは不可能だと確信して、まずは単身で行ってから後日家族と合流することにして、引っ越し関係は家族にまかせることにしました。それでも当面の自分の身の回りや、残していく自分の荷物は整理しておかないといけません。それだけで一週間くらいは必要だったかと思います。

さてH1B(のためのI-797)の申請から裁可までの期間ですが、何もしないと数ヶ月かかるそうです。プレミアムプロセッシングという、1000ドル追加で払うと15日で決定されるという仕組みがあり、今回は会社が弁護士にそれを使う指示を出してくれていました。会社負担では大した金額ではないので、比較的大きな会社のサポートを受けるときは通常適用するんでしょうね。 

なお、この就労許可の申請中、そしてビザスタンプがもらえるまでの間は、アメリカへの渡航は原則しないのが得策のようです。家探しなどしたくもなるんですが、我慢しましょう。

じれったく待ちましたが、きっかり15日後にI-797が認可されたとの通知をうけました。ここですぐに領事館の面接の予約を取るように弁護士から指示されます。

ここからがややこしいのですが、一日でも早くビザを得るためにはかなり手際よく進めていかないといけません。面接予約には DS-160 というオンラインフォームを完成させる必要があります。書類等の依存関係はこんな感じです。 

DS-160 記入に必要な書類、情報:
・H1B認可番号 これは弁護士からメール等で受け取れます。
・家族全員の写真 ビザ用の写真は基準が小うるさい(背景が白で影がないこと、髪型、写真中に顔の大きさなど)のと、電子データとプリント写真の両方が必要です。慣れている写真屋で撮ってもらうのがいいと思いますが、結局僕は自宅の壁の前で自分のEOSで撮った写真と、コンビニでプリントしたもので通せました。でもコンビニプリントでサイズを合わせるのはちょっとコツがいりますね。
・アメリカの連絡先 雇用先のビザ担当者の名前やメールアドレスなどが必要です。
・渡航歴、職歴 ここでも過去の渡航歴と職歴が必要です。

領事館のページから入力画面があり、写真をアップロードしたり必死に入力したりしてフォームを完成させると、最後にバーコードつきの確認ページが出てきます。この番号を使って、領事館の面接予約ができます。 

一方、面接当時までに用意できればいい書類は、
・I-797 (H1B 認可時にもらえる書類。ちょっとかっこいい紙2枚に印刷されている)
・LCA のコピー
・会社からのサポートレター
・学歴証明、その解説など

などです。こちらは僕の場合弁護士がそろえてくれて、Fedex で郵送してくれました。この到着を待ってからの面接予約だと、一週間くらい遅れてしまうと思います。先に予約しましょう。さらにそのほか自分で用意するものとして、

・プリントした写真(5cm * 5cm)
・申請費用の振り込みのATMでの控え
・クリアファイル
・レターパック500(家族一緒のときは一つでOK)
などがあります。

領事館ページでは面接の空き情報が確認できます。確認するためには DS-160 の番号を入力しないといけないのですが、実はここはどんな文字列をいれても確認だけは出来るみたいです。各地の領事館の状況を見たい方は覗いてみるといいかもしれません(悪用しないように)

僕はそのとき福岡に住んでいたので福岡領事館で面接がしたかったのですが、札幌や福岡は月に数回しか面接日がないようです。東京大阪はかなり枠があるんですが、受ける人も多いのですぐ埋まってしまいます。ただ、キャンセルする人も多いようで、日々状況は変わりますからこまめにチェックするといいでしょう。もし空いていたらすぐ翌日の予約をとっても(書類さえそろっていれば)大丈夫だと思います。僕の時期は、一週間先くらいからいくつか空きがある、という状態でした。予約を取った後で変更することもできます。

ここで最大の注意点があるのですが、この予約を取ったときの画面、これを必ず、プリントしないといけません。これは DS-160 のバーコード付きの確認画面とは別に、領事館の入り口で必要になるのですが、この画面、メールもされないのでブラウザを閉じてしまうと失われてしまいます。なんというひどいトラップ。その後の予約確認や変更にはこの画面で表示される予約コードが必要になりますし、同じ人が重複で予約すると領事館側でキャンセルする、というような記述もあります。もしそうなったら、電話で問い合わせるしかないようですが、これが有料だったりして、かなり泥沼にはまってしまいます。気をつけましょう。確認画面には面接地、予約コード、時間、などが書いてあります。

なお家族で面接する場合、年齢次第ですが子供の分の予約はいりません。親の面接のときに書類やパスポートを持って行って、一緒にやってもらいます。大人はそれぞれ必要なので、夫婦で一緒に行くときは同じ時間帯が取れるようにしたいですよね。

多くの人は東京か大阪で悩むと思いますが、どうも話によると東京は待ち時間も多くチェックも厳しく、大阪の方が全体的には楽ができるようです。僕は別件で大阪領事館に行ったことがあって、割と建物の状況などを知っていたので大阪にしました。それでも建物外などで並んだりする必要はあるのですが、警備員の人もやさしく対応してくれたと思います。このあたりの話はまた後でします。

申請費用はペイジーで振り込みます。地方だと郵便局が便利だと思います。ATMの控え(ちっちゃい紙)を大切に持って帰って、DS-160 の確認書の、右側のバーコードの印刷してあるところのすぐ下に貼ります。この場所もちょっと重要で、確認書の下側に紙の4分の1くらい余白があると思いますが、領事館の窓口でここに大きめなスタンプを押すため、その余白が見えているようにしないといけません。場合によっては窓口で貼り直すこともある(僕がそうだった)ので、軽めのノリ等で控えの上の部分だけを貼り付けるのが良いと思います。プリント写真も貼りますが、これは上下逆にして左上部分に貼ります。かなり意味不明です。詳しくは日本の領事館のホームページに説明文書があるのでそちらをご覧ください。クリアファイルに入れる順番も指定があります。まあ、この辺りをちょっと間違ったからビザが下りない、ということは無いと思いますけど・・・

レターパックのトラッキング用番号シールは取っておきます。窓口でも取っておくように指示されます。このレターパックって大きくてA4クリアファイルには入らないですよね。折っていいのか?とか悩む人もいるかもですが、折らずにそのままでもいいです。クリアファイルがあんまり厚くなると、窓口の下の書類口を通りにくくなりますし(笑)。とにかく初めてだとわからないことが多すぎて大変です。


準備が整ったら、面接の日を待ちます。

つづく

↑このページのトップヘ