Artichoke Brethren

カリフォルニア・ベイエリアに住む CG エンジニアの気まぐれなブログ (ただいま引っ越し中)

2011年11月

電話でオファーを受諾した数日後に Fedex で契約書が届きました。ポジションや年俸、雇用条件などが A4(レターサイズですけど)一枚に書いてあるものが二部届くので、両方に署名して片方を送り返します。これは今までの勤務先とほとんど同じスタイルだったのでおなじみ。同時に弁護士事務所のサイトにアカウントが作られ、申請用の情報を記入して資料をアップロードするようにリクエストされました。

まずこの弁護士に伝える情報が、結構大変です。自分や家族のパスポート番号や生年月日などはいいんですが、過去の職歴の会社の住所とか大学の住所とかでまず悩みます。そして過去10年の渡米履歴を全部書いてくれというところで悶絶。しかもそれぞれ観光か商用かをかかないといけません。平均して毎年3〜4回は出張で行っているので、全部で数十個の項目になってしまいました。日付はパスポートのスタンプを頼りに埋めていきます。アメリカ入国スタンプには WT/WB という文字に丸をつけてあるところがあると思いますが、これは日本人などを対象とした短期滞在のビザ免除(Waiver)で、Tourist か Business か、という略だと思います。アメリカは出国スタンプがないので、日本の入国スタンプを探しながら滞在日数を記録していく・・・という作業に数時間かかりました。

さらに各種証明書が必要なのですが、また大変なのが大学と大学院の卒業証明書と成績証明書。これを英文でもらわないといけません。もちろん大学に連絡すれば発行してもらえるのですが、ウェブサイトには英文証明書は2週間かかります、などと書いてあります。ここで2週間もかけているわけにはいかないので、速達で発行願を出して、着いた頃に教務に電話して急ぎだと伝えます。するとどちらの大学も即日発行して投函してくれました。返信封筒も速達にしておいたので、中3日くらいで入手することができました。

続いて婚姻証明と出生証明。これは戸籍謄本を取ってきて、自分で翻訳します。機械的に翻訳すれば良いのでそんなに大変な作業ではありません。web にも翻訳例がいくつかありますので、参考にしましょう。日本の戸籍って本当に便利なシステムですよね。

一通り書類がそろったらあとは弁護士にまかせます。H1B ビザは、まず労働局に許可を申請して LCA というのを発行してもらいます。僕の場合は 10/19 に申請受理されて、10/25 に許可がもらえました。弁護士さんはこれを会社に送ってサインをもらいますのでここでまた数日かかります。次に移民局に H1B 申請をします。この時点で僕が提供した資料の他に会社からのサポートレター(なぜこの外国人を雇う必要があるかという説明)、別の機関に依頼して発行してもらった学歴の証明書の鑑定書のようなものが追加され、11/1 に申請が受理されます。H1B 申請では、1000ドル払うことで 15 日以内に結果がわかるプレミアムプロセッシングという仕組みがあり、今回は会社持ちでこの手続きが利用可能でした。使わない場合数ヶ月かかることもあるようです。その結果、11/15 に晴れて移民局の許可が下り、I-797 という書類が発行されました。これで半分くらい終わりです。

I-797 や LCA 他、書類一式が弁護士事務所から Fedex で日本に送られてくるので、これをもってアメリカ領事館で面接を行うことができます。

さらにつづく

さて9月下旬に本社を訪問して本格的にインタビュー(面接)をすることになりました。渡航の手配は先方がやってくれると言っていましたが、マイルを達成しておきたかったのと(これでANAのSFCを入手)、LAの友人を訪ねたかったこともあって、今回は自腹で渡米。でもやっぱりSFOへは直行便がいいですね。LA乗り換えは時間がかかりすぎて大変です。

対面のインタビューは昼過ぎから半日かけて行いました。30分おきに11セッション、各組は2人づつ、同じくらいの職位の人、VPクラス、新人、QA やプロマネなどと様々な人と話をします。休憩なしに続けたので大変でしたが、全体的には楽しめました。自分の紹介、動機、今後のビジョン、仕事の進め方、トラブル時の考え方などの一般的な話題が3割くらい、プログラミングに関する知識の質問が3割くらい、残りの4割は専門知識などについての質問だったと思います。最初に話をした VP の方とも再会して、ここまで時間かかっちゃったねえ、なんて話していましたが、結果的にはこの後、働き始めるまでの方が時間がかかったりしてます(笑)。 

 プログラミングの話題はC++に関すること(デザインパターンやパフォーマンス、テンプレートの扱いなど)がほとんどでしたが、現場にいるプログラマなら簡単に答えられるようなことだったと思います。例えばこんな問題でした。

STL には vector などのコンテナがあるが、python などの言語のようにどんな型でも入れられるようにしたい。
v.push_back(false);
v.push_back(1.0F);
v.push_back("string");
C++ でこれを実現するにはどうしたらいいか。

もちろんここでは boost::any という答えではダメなので、その簡単な実装を示せばいいんですが、英語でちゃんと説明するのは意外と難しかったりします。僕はホワイトボードにクラスの実装などを書いて、インタビュワーにも助けられながらどうにかなりました。もうちょっとプログラミングの書籍を原著で読んでおけば適切な単語などもすんなり出てきたのかもしれません・・・

夕方全部のセッションが終わって、リクルーターの人と待遇などについて相談しました。僕は日本での給料が非常識に高すぎますし、円高もあってそのまま要求してしまうと先方があきらめてしまうと思ったので、基本はお任せします、という感じにしました。もっともこれは今回僕が給料がどうでも良かったからであって、普通はしっかりと希望を伝えるべきものでしょう。業界や人によって大分違うとは思いますが、日本から中途で転職するキャリアのあるソフトウェアエンジニアは最低でも12〜15万ドルくらいを提示されるんじゃないかなと思います。上はいくらでもあるでしょう。myvisajobs.comglassdoor.com の情報はとても参考になりますのでぜひ見て下さい。短期間有料会員になってもいいと思います。特に glassdoor、各社のレビューが普通に面白いですよ。

給料の他には、スケジュールの相談をされました。やはり先方は一日でも早く、ということなんですが、僕の場合ビザ手続きで1ヶ月以上かかるのは確実だったので、とりあえず2ヶ月後(12月)くらい、と伝えておきました。これで訪問インタビューは終わりです。さすがに終わったらくたびれてしまいました。

ところで永住権などを持たない日本人が、日本法人などのないアメリカ企業で働くためにはH1B(またはO1)ビザが必須になるわけですが、そのためにはまず採用を決めてもらわないといけません。多くの場合、ここでスケジュールが最大の問題になると思います。

H1B ビザは年度ごとに65000人(+20000)という枠が決まっていて、毎年10月1日からの就労許可申請を4月から受け付けています。一昨年までは、4月1日に受け付けを開始して数日で枠が埋まってしまうという状況が続いていました。つまり、10月1日から働くために3月くらいに採用してもらっていないといけないわけですが、半年以上先になる人材を採ってくれるアメリカ企業はほとんどないので、この経路は他のビザやOPT(アメリカの大学卒業後に与えられる就労期間)をはさんで切り替えるという人にほぼ限定されていたと思います。つまり、このような転職は実質不可能でした。

ところがリーマンショックを経て2010年からは H1B の申請が激減し(企業が外国人労働者の採用を控えたため)、昨年は1月まで、今年も11月末時点でまだ発給枠が残されています。従って、9月〜10月に採用を決めれば、すぐにビザを申請して働き始めることが可能になっているのです。これより早くても遅くても良くないです。今後H1Bビザを巡る状況がどう変化するかはわかりませんが、去年、今年、そしておそらく来年も、非常に貴重なチャンスがある、と言っていいと思います。なお後で詳しく書きますが、現在H1Bビザ手続きには最速でも1ヶ月ちょっとはかかります。

一週間後、担当リクルーターから電話があり、そこで給料やボーナスなどの条件、各種ベネフィット(福利厚生・保険等)などが提示されて、オファーを受けるかどうか聞かれましたので、その場で受諾しました。これで僕と会社の意思は決まったんですが、各種手続きはこれからが本番になります・・・

縁あって12月からベイエリアの CG 会社で働くことになりました。細かな事情は別として、日本人のエンジニアが中途で H1B ビザをとってアメリカ企業に転職するというのは結構大変だったと思うので、主に手続き面等について忘れないうちに書き留めておきたいと思います。後のみなさんの何かの参考になればさいわい。

きっかけといいますか、最初に先方の方と話をしたのは8月の上旬のことでした。相手は配属先になる部門のVP(バイスプレジデント、まあ日本だと部門の部長とか本部長みたいな感じで、採用も含めてその部門の活動のほとんどの権限がある)の方でした。共通の知り合いに紹介してもらって海外のカンファレンス会場で30分ほど1対1で話す機会があったのですが、その時点では転職の話ではなくて、今のCG制作の抱える問題などについて意見交換した、という感じです。僕もこの会話がとても楽しく、一緒にやっていこう、社内のいろんな人に紹介してもう少し話を詰めてみるから履歴書とかを送ってくれ、ということになりました。そして今回の海外転職活動がスタートしたわけです。

英文の履歴書を書いたのは初めてでしたが、最近は参考になるサイトが多いので助かります。職歴二つとその仕事内容、学歴、論文、CG 関連のその他活動などを A4 二枚にまとめました。装飾もなくてシンプルな感じに。あとは補足資料として、得意分野や過去の仕事内容などを詳しく説明したポートフォリオを15ページくらいつくりました。エンジニアだと通常はこうした資料は求められないのですが、絵付きで資料があるとインタビューなどでは話しやすくなりますので、英語に自信が無い方にはお勧めしたいです。

そして VP さん宛てのカバーレターを書きます。知り合いがいなければ採用担当者様、でも良いかと思いますが、このカバーレターは履歴書等と一緒にコピーされて面接担当者に渡されますから、内容はちゃんと書いた方が良いです。英文で三段落くらい、自己紹介と希望する業務、もうひとアピール、くらい書いておけば形になるでしょう。僕は念のため英会話教室の先生に添削してもらいました。論文と同様で、かっこつけた表現は不要でシンプルで意図がわかりやすい文章が良いと思います。

さらに過去に関わったタイトルの簡単なムービーも用意して USB メモリにいれて、プリントアウトと一緒に Fedex で送りました。ところが、この Fedex、先方には到着したもののなぜか行方がわからなくなってしまい、結局メールで送り直すことに。最終的にはオファーをもらった後に発見されたんですが・・・まあ日本でも人事に送った書類が紛失されることはよくありますから、返事がないときにはメールなどで再確認するのが良いですね。

その後メールで電話インタビューをセッティングする旨の連絡が来て、9月はじめに行うことになりました。日本とサンフランシスコでは結構な時差がありますが、朝7時に電話をかけてきてもらうことにしました。先方は昼過ぎになるので、この時間帯は割と良いです。

電話インタビューで準備するものは、先方に送った履歴書などの書類、メモ、程度でしょう。辞書など用意しても引いている暇はないと思います。また電話回線は固定電話の方が絶対に良いです。僕は仕事で電話で英語を話す経験は割とありましたが、慣れていないとかなり聞き取りづらいと思います。英会話の先生などと電話や Skype で練習しておくのも良いでしょう。僕の場合、最近はヘッドハンティングの会社から英語で電話がかかってくることが頻繁にあって、いい練習になりました。ヘッドハンターとのミーティングは無料だし専門用語を話す機会があるし、エンジニアの英語練習には最適なんじゃないかと思います。LinkedIn に登録しておくと、よく電話かかってくるような気がします(でもどうやって携帯の電話番号を知ったんだろう・・・)

一番のコツは、とにかくゆっくり話すことです。特に西海岸の人たちは、英語が下手な人との会話にとても慣れています。相手がゆっくり話すとすぐに会話の速度や表現の難易度を合わせてくれますから、これを活用しない手はありません。流暢に話すと自らハードルをあげてしまいます。秘書や営業などは別として、エンジニアのコミュニケーション能力は会話速度だけではありませんから、シンプルに正確に会話をすることに努めるのが一番だと思います。

そうそう、電話線に挟んでPC等で会話を録音できる機器もあるので、最初は録音しておくのもお勧めです。電話インタビューしてくる人は面接で再び会うことも多いですから、一度話した内容をしっかりチェックしておくと後で安心できます。

朝ちょうど約束の時間に電話がかかってきて、まずは15分ほど先方の仕事について説明をうけました。思ったより長かったです。その後簡単に自己紹介をして、割と具体的に仕事の内容を相談します。この時点でかなり自分の希望にマッチしている感じはありました。プログラミングの知識を問うような質問などはありませんでした。あっという間に終わったなという印象です。また人事からメールで連絡する、といって、30分程度で電話は終わりました。この電話インタビューしてきた人は、転職後直属の上司になる人でした。

つづく

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